孤独なおちんちん

かなり恥ずかしがり屋な30代独身男性の孤独なブログ(U)主に自己啓発系の書評や自分の人生について語ります(U)

スポーツアナウンサーの実況の在り方

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リオ五輪女子レスリング53キロ級決勝で吉田沙保里選手が破れた試合の実況が話題になりました。

実況を担当した日テレの河村亮アナウンサーは、まるで浪花節のような情感たっぷりの実況を繰り広げたのですが、それが過剰な演出だとしてネットで賛否両論が巻き起こりました。

 

実況の一部書き起こし

お父さんとお母さんはどうしてここまでしてくれるんだろう

幼い吉田はわかりませんでした

ただ、今はわかります

親の無償の愛

レスリングがこれまでの人生を作ってくれた

家族の支えがあったからこそ今の吉田がいる

おそらく父は今自分のことを心配しているだろう

「お前大丈夫か」

(それが)お父さんに一番できること

私は元気です

決勝で相手を倒します

今回、父が一緒になって戦ってくれると思う

力が2倍になると思う

そんな不思議な感覚がある

そして、今、静かに父・栄勝さんは見守っているでしょうか

 

AbemaTVのニュース番組「AbemaPrime」では、ゲストで元NHKアナウンサーの山本浩さんが出演して、真のスポーツ実況とはどういうものかについて語っていました。

 

元NHKアナウンサーの堀潤さんは新人時代、スポーツ実況の神である山本浩さんから

「実況とは哲学を伝えることである。見えないものを伝えるのであって、ただ目の前のものを描写しているだけでは意味がない」

ということを学んだそうです。

 

スポーツ実況の原則はスポーツ選手が自分で語ることなのだと山本浩さんは語ります。

スポーツ選手はプレイを通じて様々なことを主張しています。

 

スポーツ実況というのは、スポーツ選手がプレイを通じて主張していることがわかりにくかったり伝わりにくかったりする部分を代弁して伝えるというのがベースにあるとのことです。

 

それまでに大量の取材はするのですが、実際に実況するときはそれを一旦全て捨てて、選手が現場のプレイで語るその瞬間を伝えます。

積み重ねてきた取材とライブの瞬発力の両方が必要となります。

 

各局のアナウンサーは若手の頃は様々なスポーツ実況を経験することで、そのような取材力と現場での瞬発力を徹底的に磨いていくそうです。

 

古館伊知郎さんは新人時代、先輩に付いて歩いている頃、新幹線に乗ると東京から大阪まで当時約3時間、車窓の風景を全部実況するというトレーニングをしていたそうです。

タクシーに乗る時も風景を全部実況して技術を磨いていたとか。

それだけスポーツ実況というのは職人のごとく繊細な能力が必要とされます。

 

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スポーツ実況で大事なのは、お客さんは誰なのか、実況は誰のためにやるのかということです。

お客さんが何を知りたがっているのかをベースに実況を組み立てていかなければなりません。

 

その時に実況者の感情が入ってしまうことはあります。

ですが、感動を無理やり入れてしまうとお客さんは興ざめしてしまいます。

感動は共有できれば良いものを作り出せますが、かみ合わなければ視聴者を冷めさせてしまうだけなのです。

 

このようなスポーツ実況の在り方から考えると、日テレの河村亮アナウンサーが今回やったことはお客さんに受け入れられなかったという点では失敗でした。

でも河村アナの考えたことが完全に間違っていたとは言い切れません。

 

オリンピックの放送は普段のスポーツ中継と違って、同じ映像がいろいろな局で使われるという特殊な状況があります。

また、今のスポーツ中継は昔と違ってスロー再生が多く出るので、実況もどうしても過去が中心になってしまいます。

 

このような状況も考慮して、河村アナは新しい実況にチャレンジしたのです。

でも結果的にはお客さんに受け入れられなかった。

もし上記の浪花節実況をもっと別のタイミングに持ってきていたらまったく逆の結果になっていたかもしれません。

 

数ある名言を残している、スポーツ実況の神である山本浩さんはスポーツ実況の名言についてこのようなことを言っていました。

スポーツ実況は名言を残そうと思ってやるものではない。

名言は選手が実況者に言わせるものであり、選手が残すもの。

名言が残るのは、そのとき選手が名言を残させるようなプレイをするから。

 

かっこいいですね。

スポーツ実況の名言というのは、実況者が徹底的に技術を磨いて準備をしたからといって出るものではなく、実況者と選手の波長が偶然ぴったり合ったときに必然として生まれるものなんですね。

 

そういう意味では今回の河村アナは自ら名試合、名実況を作り出そうとしてしまったから失敗したのかもしれません。

ですが一方でそのチャレンジはこれからのスポーツ実況の新しい可能性を作り出そうというものでもありました。

 

出演者も口をそろえて言っていましたが、スポーツ実況は本当に奥が深くて難しいですね。